カプコンのゲームは、6割がPCで売れている
カプコンの2027年3月期・第1四半期(2026年4〜6月)の販売本数は、合計2,381万本。そのうちPC版が1,437万本で、全体の60.4%を占めた(前年同期比+74.4%)。同じ表の家庭用ゲーム機(コンソール)向けは784万本、構成比32.9%。パッケージにいたっては159万本、6.7%しかない。
注意して読む必要がある。資料の「コンソール」はデジタル販売の内訳で、店頭で売られるパッケージ159万本は別に計上されている。家庭用機向けを合わせて数えるなら、この784万本にパッケージを足すことになる。それでもPCの1,437万本には届かない。
バイオハザード、モンスターハンター、ストリートファイター。どれも「テレビの前で、ゲーム機のコントローラーを握る」絵が浮かぶブランドだ。だがこの四半期に実際にカプコンのゲームを買った人のうち、6割はPCの前に座っていたことになる。

2023年3月発売の『バイオハザード RE:4』は、この四半期だけで243万本、累計1,604万本。画像はSteamストアの公開素材
4年前は、PCと家庭用機がきっちり半々だった
比べる相手は同じ表の中にある。4年前の2022年4〜6月は、PCが585万本で構成比50.0%。一方でコンソール455万本(38.9%)とパッケージ130万本(11.1%)を足すと、**ちょうど同じ50.0%**になる。つまりこの時点では、PCと家庭用機が本当に半分ずつだった。
そこからPCの構成比は45.6%まで落ち、51.6%、58.2%と戻し、今回の60.4%。行ったり来たりしながら、この4年でPCの側に10ポイント寄ったというのが資料の示す動きだ。
大事なのは、これが「家庭用機が減った結果」ではないことだ。コンソール向けの784万本は前年同期比+49.6%で、こちらもしっかり伸びている。両方伸びたうえで、PCの伸び方(+74.4%)のほうが大きかった。どちらかが沈んで見かけ上PCが浮いた、という話ではない。
そしてもう一つ、同じページにこの四半期の性格を決める数字が並んでいる。2,381万本のうちリピート作(過去に発売済みの作品)が2,126万本、89.3%。資料は「第1四半期のリピート作本数は四半期ベースで過去最高」と書いている。新作は255万本、10.7%だ。
編集部の見立て:棚が消えなくなったのは、PCだけの話ではない
ここからは資料に書かれていない、編集部の見方だ。
売上上位タイトルの表を見ると、10本のうち今期発売の新作は4月17日に出た『プラグマタ』(251万本)だけだ。あとは2023年3月の『バイオハザード RE:4』(243万本)、2019年1月の『バイオハザード RE:2』(142万本)、2018年1月の『モンスターハンター:ワールド』(78万本)と続き、いちばん古いものは2012年10月の『バイオハザード6』で、いまも四半期に71万本売れている。発売から10年以上経った作品が、売上上位に居座り続けている。
なぜ過去作が売れ続けるのか。理由は「棚が消えないから」だ。店頭の棚には限りがあり、古い作品は押し出されていくが、配信ストアの棚は減らない。セールのたびに、何年も前の作品が新しい客を捕まえ続ける。この四半期の販売本数はデジタルが2,222万本で93.3%、パッケージは159万本の6.7%しかない。
ただしこれはPCに限った話ではない。PS StoreもNintendo eShopも棚は消えないので、「棚が消えないから」だけではPCとコンソールの差は説明できない。
そのうえで、伸び方には差がある。リピート作全体が前年同期比+59.1%で伸びたのに対し、PCは+74.4%とそれを上回り、コンソールは+49.6%とそれを下回った。リピート作は販売本数の89.3%を占める。その全体の伸びより速く伸びたのはPCだけで、遅かったのがコンソールなら、この四半期に増えた過去作の多くはPC側で売れたと見るのが自然だ。
ただし新作も前年同期比+222.8%と大きく伸びているので、PCの伸びのうち『プラグマタ』のような新作が占める分もあるはずだ。ここは数字の形からの推察として読んでほしい。
では、なぜPCの側でだけ伸びが大きくなるのか。入口の数が違う、というのが編集部の見方だ。コンソールで過去作を買えるのは、その本体を持っている人だけだ。一方PCは、ゲーム機を買っていない人がすでに持っている機械でもある。同じ「棚が消えない売り場」でも、手を伸ばせる人の母数がPCのほうが大きい。
資料にその広がりを示す数字がある。カプコンはこの四半期、256タイトルを236の国と地域で販売している。4年前は297タイトル/206の国と地域だった。扱うタイトル数は減ったのに、売っている国と地域は30増えている。 家庭用ゲーム機の普及が薄い地域まで含まれてくるはずで、そこで最初に触れる窓口になるのはPCのほうだろう。
もう一つは値引きの回数だ。PCのストアは大型セールが年に何度も巡ってきて、そのたびに旧作が値札を書き換えて店頭に戻る。過去作にとっては、露出の機会がそのまま販売機会になる。
そう考えると、カプコンにとっての新作の意味も変わってくる。新作は「その年に売り切る商品」ではなく、棚に一枚ずつ足していく資産になる。今回でいえば『プラグマタ』が251万本で棚に加わり、9月4日には『鬼武者 Way of the Sword』が控えている。棚に置いた本数が増えるほど、翌年以降のリピート作の底が上がっていく。

2018年1月発売の『モンスターハンター:ワールド』は、8年半を経てなお四半期に78万本。累計3,045万本はカプコン最多。画像はSteamストアの公開素材
累計の数字がそれを裏づけている。『モンスターハンター:ワールド』は8年半で3,045万本、『バイオハザード7』は9年半で1,841万本、『バイオハザード6』にいたっては1,760万本。どれも発売した年に売り切ったのではなく、何年もかけて積み上げた数字だ。
もちろん、この構図が永久に続く保証はない。セールへの依存が深まれば1本あたりの単価は下がるし、値引きを前提に待つ客も増える。それでも問いはこうだ。14年前のバイオハザード6が、いまも四半期に71万本売れる会社。その棚に、モンスターハンターもストリートファイターも、これから出る作品も積み上がっていくとしたら、5年後の「過去作の売上」はどこまで膨らむのか。
カプコンが本当に強いのは、次の新作ではなく、もう出してしまった作品の方かもしれない。
出典: カプコンが公開した決算説明資料(IRページ)。数値・スライド画像は同資料に基づく。
本記事はカプコンが公開した決算説明資料を基に、公開情報を要約・整理したものです。特定の金融商品の売買を推奨するものではなく、投資助言ではありません。文責:山口修平(Quest Board編集責任者)。




