SNSの向こうに潜む「闇バイト」を、教室で疑似体験する

株式会社Classroom Adventureと荒川区(区長:滝口学)は、若者を狙う「闇バイト」の危険性を学ぶ情報リテラシー教育プログラム「レイの失踪」を、区内の中学校全10校へ導入したことを発表した。自治体が管轄する学校すべてにこうしたプログラムを導入するのは全国初の事例だという。実施期間は2026年6月から今年度末までを予定している。

友人の失踪を追ううちに、抜け出せなくなっていく
「レイの失踪」は、失踪した友人「レイ」のSNSを探索しながら、実際に闇バイトへ勧誘され、個人情報を奪われ、抜け出せなくなっていく過程を追体験するプログラムだ。座学で手口を説明されるのではなく、生徒自身がスマートフォンやタブレットの画面を操作しながら、勧誘者とのチャットのやり取りを追体験していく。

紹介動画
画面の中では、身分証を持った自撮り写真を送るよう求められる場面も再現されている。「身分証がレイさんのものだと証明するためです」という理由づけで個人情報を引き出そうとする、実際の勧誘でも使われる手口だ。学習は「狙われない(危険な投稿を見直す)」「騙されない(勧誘の手口や隠語を見抜く)」「ハマらない(一度関わると抜け出せなくなる仕組みを理解する)」という3つの視点で構成されている。

逮捕者の8割が10代・20代――深刻化するデータ

導入の背景には、闇バイトをめぐる深刻な数字がある。荒川区とClassroom Adventureによれば、闇バイト関連の逮捕者の8割を10代・20代の若者が占め、高校生の約8割がネット上の危険な求人情報を正しく判断できないとされている。SNSの秘匿性の高いメッセージアプリへ誘導されたり、「猫探し」「板」といった隠語が使われたりする実態も、プログラムの中で紹介されている。
区長が中学生に送った、まっすぐなメッセージ

導入初日の授業には、荒川区長・滝口学氏からのビデオメッセージも用意された。滝口区長は「『自分は大丈夫』と思っていませんか?犯罪のプロは言葉巧みに、または皆さんの小さな不安や孤独につけ込んで、気付かないうちに巻き込もうとしてきます」と生徒に問いかけた。

さらに「一歩を踏み出す力を学んでください」と背中を押しつつ、「区役所や警察もいつでも皆さんの味方です」と、困ったときに頼れる相手がいることも伝えている。

授業を終えた生徒たちは体育館に集まり、記念撮影に応じた。

他の自治体にも広がるか、教員向けのオンライン体験会も
株式会社 Classroom Adventure
株式会社Classroom Adventureは、慶應義塾大学の学生が立ち上げたEdtechスタートアップ。『Make maenomeri(前のめりをつくる)』をミッションに掲げ、ゲーミフィケーションを活用した学習プログラムを展開する。誤情報・偽情報をテーマにした主力プログラム「レイのブログ」は世界14カ国以上で5万人超が体験済みで、国際大会「GenAsia Challenge」の主催や国内外での受賞歴も持つ。
Classroom Adventureは、今回の荒川区での取り組みを民間企業と自治体が一体となったモデルケースと位置づけ、今後は他の教育機関や自治体との連携をさらに広げていく方針を示している。導入を検討したい教育機関・自治体の担当者向けには、デモ・説明会も実施しているという。

先生向けには、オンライン体験会が毎週月曜よる7時から開催されている。自校での導入に関心がある教員は、まずこの体験会をのぞいてみるとよさそうだ。詳しい開催日時や会場については、荒川区生活安全課への問い合わせで確認できる。





