ブラジル下院に、ゲーム終了後の消費者保護を問う法案

ブラジル連邦下院の法案トラッキングページによると、ジャンヂラ・フェガリ議員(Jandira Feghali、PCdoB/RJ)は2026年7月9日、ゲームの購入者保護とデジタル文化財としての保存を扱う「PL 3612/2026」を提出した。提出の告知として、同議員のXポストも確認できる。

全文PDFでは、消費者保護法典(Lei nº 8.078、1990年)と、2024年制定のゲーム産業法的枠組み(Lei nº 14.852、Marco Legal para a Indústria de Jogos Eletrônicos)を改正する内容が示されている。現時点では提出段階の法案であり、ただちにゲーム業界のルールが変わるものではない。

販売時点で、サーバー依存と最低サポート期間を明示

PL 3612/2026は、ブラジル国内で提供、ライセンス、販売されるゲームを対象に、物理版・デジタル版や提供元の国を問わず適用する構成になっている。

販売時には、ゲームがサーバーやリモートサービスに依存するか、シングルプレイを完全にオフラインで実行できるか、通常利用に必要なサービスをどれだけ維持するかを、ポルトガル語で明確に示すことを求める。最低サポート期間は、ブラジル国内での最初の販売日から原則2年以上とされ、例外がある場合は適切に説明する必要がある。

この情報はパッケージ、デジタル販売ページ、配信プラットフォーム、利用規約などに目立つ形で掲載する想定だ。読みにくい契約条項の中に埋もれさせる形は、法案上の趣旨から外れる。

サービス終了は180日前通知。終了後の選択肢は3つ

サーバー依存型ゲームのサービスを終了する場合、事業者は少なくとも180日前に消費者へ通知する必要がある。通知手段にはゲーム内表示、公式サイトやSNS、必要に応じた登録メール、ブラジルで販売された配信プラットフォームでの告知が含まれる。

終了後に事業者が取るべき措置は、少なくとも次のいずれかだ。

  • 追加費用なしで、通常利用をオフラインで可能にするアップデート、修正パッチ、代替版を提供する
  • 技術的に可能な範囲で、コミュニティや第三者が運用を続けられる継続ツールやサーバー部品を公開する
  • ゲーム本体と追加コンテンツの支払額について、利用期間に応じた比例返金を行う

一方で、当初から継続課金型サービスとして提供されるゲーム、消費者から直接・間接の金銭的対価を受けない完全無料ゲーム、最初から完全オフラインで動くゲームは、一部義務の対象外として整理されている。

コミュニティサーバーも認める設計。ただし収益化には制限

法案はマルチプレイゲームについて、公式サービス終了後または終了時の義務不履行がある場合、プレイヤーやコミュニティが自前のサーバーを運用できる道も示している。ただし、これはゲームを動かし続けるための技術的運用に限られ、著作権や知的財産権が移転するわけではない。

コミュニティサーバー側が費用を集めることは可能とされるが、目的はインフラ費、保守費、運営チームの報酬に限定される。年間収入は200最低賃金まで、主要運営者やチームの個人報酬は月3最低賃金までという上限も置かれている。さらに、収支や責任者、苦情窓口などを公開ページで少なくとも半年ごとに更新する透明性の要件も含まれる。

2年未満の終了には罰金。保存基金と文化財としての扱いも

ブラジル国内での最初の販売から2年以内にサービスを終了する事業者には、罰金が科される可能性がある。額は、ブラジル国内でそのゲームから得た総売上の1%、または50万レアルを基準にした比例額のうち、より大きい方とされている。

罰金収入は、法案が創設を認める「Fundo Nacional de Preservação e Fomento aos Jogos Eletrônicos」に充てられる。基金の用途には、文化的・歴史的・芸術的・技術的価値を持つゲームの保存、カタログ化、修復、公開、ブラジル産ゲームの制作支援、人材育成、要件を満たすコミュニティサーバー支援などが並ぶ。

また、ブラジル産ゲームや同国にとって重要性が認められるゲームを、デジタル文化財として扱う方針も盛り込まれている。事業者がサービスを終了する際には、文化保存や学術研究、非商用利用を目的として、ゲーム本体、ソースコード、サーバー部品、技術文書を国立図書館または認定機関に任意で寄託できる。

背景にはStop Killing GamesとThe Crewの事例

法案の理由書では、Ubisoftの『The Crew』がサーバー終了によりアクセス不能になった事例が、欧州の「Stop Killing Games」運動を後押しした例として挙げられている。同運動の欧州市民イニシアチブは、登録番号2024/000007として100万を超える署名を集め、デジタル購入物の継続利用をめぐる議論を国際的に広げた。

PL 3612/2026は、そうした議論をブラジルの消費者保護とゲーム保存の文脈に引き寄せるものだ。成立した場合でも、公布後180日以内の規則整備、さらに公布から360日後の施行が想定されており、対象はその時点以降にブラジル国内で販売または提供されるゲームとなる。今後は、下院での審議を通じて条文がどこまで維持されるかが焦点になる。