スクウェア・エニックスHDの2027年3月期第1四半期決算資料に、目を引く数字がある。『ファイナルファンタジーXIV』などを運営するMMO事業の営業利益の増加額、プラス0.3億円。売上は31億円も伸びたのに、利益はほぼ横ばいだった。ただしこれは、不調の数字ではない。

スクウェア・エニックスHD 2027年3月期 第1四半期 11ページ
P11この数字が載っているページ。スクウェア・エニックスHDが公開した決算説明資料より。

会社全体は増収増益、HDゲームが牽引

まず全体から。売上高は784億円で、前年同期の592億円から192億円増えた。営業利益は170億円で、こちらも前年同期の90億円から80億円増えている。牽引したのはゲーム事業にあたるデジタルエンタテインメント事業だ。売上高は329億円から499億円へ、営業利益は81億円から155億円へ伸びた。

中でも家庭用の買い切り型タイトルを扱うHDゲームの伸びが大きい。売上高は前期89億円から177億円へ、営業利益は10億円から61億円へ増えた。資料は新作タイトルとカタログタイトル(過去作)の販売伸長を理由に挙げている。

『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オフライン』の画面

『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オフライン』の画面。画像はSteamストアの公開素材

増収31億円に対し、増益は0.3億円

その好調の中で、MMOだけ様子が違う。MMOは『ファイナルファンタジーXIV』と『ドラゴンクエストX』、2本の長寿オンラインRPGを運営する区分だ。売上高は127億円で、前期の96億円から31億円増えた。ところが営業利益は36億円で、前期も36億円。増加額はわずか0.3億円だ。

理由は資料に明記されている。2027年初頭の発売に向けた「関連費用の先行計上」だ。FF14は拡張パッケージ8.0「白銀のワンダラー」を2027年初頭に発売予定で、その準備の費用が、売上より先に出始めている。

一方で売上が伸びた理由として、資料は「最新拡張パッケージ発表等を受けたアクティビティ改善」を挙げる。発売はまだ先なのに、発表だけでプレイヤーの動きが活発になったということだ。なおドラゴンクエストXも6月25日に追加パッケージ「時空の迷い子たち」を発売しており、これも増収に含まれていると見られる。

編集部の見立て

ここからは編集部の見方だ。拡張パッケージという商売は、発売前の四半期に開発費や宣伝費が先に出て、売上の山は発売後にやって来る。今回の0.3億円は、その谷の底にあたる。

むしろ注目したいのは、発売前なのに売上が31億円伸びた事実のほうだ。発表だけで人が戻る。看板の力がまだ強い証拠だ。

会社全体の数字にも同じ構図が見える。第1四半期の営業利益は前年より80億円増えたのに、通期計画は490億円と、前期実績の547億円より57億円低い。8.0の発売は2027年初頭、つまり今期の終盤だ。下期にかけて費用がさらに積み上がる計画だと読むのが自然だろう。もっとも、新作HDタイトルの費用など他の要因もあり、資料からは切り分けられない。

0.3億円は停滞ではなく、助走の数字だ。跳ぶ前には、誰でも一度かがむ。


出典: スクウェア・エニックスHDが公開した決算説明資料(IRページ)。数値・スライド画像は同資料に基づく。

本記事はスクウェア・エニックスHDが公開した決算説明資料を基に、公開情報を要約・整理したものです。特定の金融商品の売買を推奨するものではなく、投資助言ではありません。文責:山口修平(Quest Board編集責任者)。