東宝が7月に公表した2027年2月期第1四半期(2026年3〜5月)の決算説明資料。アニメレーベル「TOHO animation」のソース別営業収入は、合計92億8,700万円だった。前年同期の117億4,900万円から21.0%の減少である。
ただし、この減少は事業の不調ではない。海外セールスを担う子会社TOHO Globalの会社分割に伴う会計上の調整で、海外収入の一部が翌四半期にズレたのが主因だ。調整前の従来ベースでは161億200万円と資料は試算しており、実態はむしろ増収である。
アニメ収入の表で、ゲームだけが82.1%増
その表の中に、会計のズレと関係なく素直に伸びた項目がある。ゲームだ。前年同期の4億900万円から7億4,500万円へ、82.1%の増加。配信やキャラクターライセンスが前年割れとなる中での急伸である。ゲーム収入は国内の協業が中心のため、海外収入を巡る会計調整の影響をほぼ受けず、素の伸びがそのまま数字に出たと見るのが自然だ。
資料が挙げる立役者は『呪術廻戦 ファントムパレード』と『天穂のサクナヒメ~ヒヌカ巡霊譚~』の2本だ。

『呪術廻戦 RUMBLE: SURVIVATON』の画面。画像はSteamストアの公開素材
立役者は「協業の分け前」モデル
ソース別の表で、ゲームの中身は「主に協業作品の配分金収入」と注記されている。東宝が自らゲームを開発・販売するというより、自社が関わるアニメIPを協業ゲームに出し、そこから分配金を受け取る形が中心だ。
『呪術廻戦 ファントムパレード』はサムザップとの協業で、国内では2023年11月にスマートフォン版の配信が始まったタイトル。資料には「全世界のプレイヤー数が2,500万人を突破」とある。アニメ『呪術廻戦』は第4期の制作も決まっており、アニメが続く限りゲームも稼ぎ続ける構図だ。
もう1本の『天穂のサクナヒメ~ヒヌカ巡霊譚~』は毛色が違う。東宝が幹事として企画・配信するスマホゲームで、配信開始は2026年2月。今四半期は配信直後の収入が乗ったと見るのが自然だ。ただし同じ資料の注記には、2026年7月27日をもってサービスを終了するとも書かれている。協業の分配金が積み上がる一方、幹事として自らゲームを立ち上げる側はまだ試行錯誤の途中。1冊の資料に、その両方が同居している。
配信予定の欄には、次の幹事作品『ハイキュー!! ALL Challengers』が控える。
利益で見ると、ゲームはまだ「仕込み」の段階
収入の伸びと同じ表の下段には、利益の行がある。ゲームを含むIP・アニメ事業の営業利益は、前年同期の63億3,500万円から5億2,000万円へ大きく減った。利益率も33.3%から2.8%へ落ちている。主因は収入と同じくTOHO Globalの会社分割に伴う会計上の調整で、事業の実力が落ちたわけではない。
ただ、ゲームに限って言えば、利益への貢献はこれからだ。資料の中期目標のページには、前期(2026年2月期)の主な費用として「配信開始ゲームの償却増 約43億円」が挙がっている。作ったゲームの開発費を、配信開始後に何年かに分けて費用にしていく決まりがあり、その負担が前期に一気に増えたということだ。四半期のゲーム収入7億4,500万円は、この償却を賄う途中にある数字だと読める。
それでも会社は、2032年のIP・アニメ事業の営業利益を2025年2月期の222億円比で200%以上に引き上げる目標を掲げ、その成長のカギの筆頭に「TOHO animation(ゲーム含む)」と明記している。償却の山を越えた先で、ゲームを利益の柱の一つに育てる腹づもりだ。
編集部の見立て
ここからは編集部の見方だ。金額だけ見れば、ゲームの7億4,500万円はTOHO animation合計92億8,700万円の中では小さな項目にすぎない。だが東宝は、2032年にIP・アニメ事業の営業利益を2025年2月期実績222億円の200%以上へ伸ばす目標を掲げ、その成長のカギの筆頭に「TOHO animation(ゲーム含む)」とわざわざ明記している。ゲームはおまけではなく、成長ドライバーの一角に数えられているのだ。
アニメがヒットすればゲームが稼ぎ、ゲームが動き続ければIPの寿命が延びる。放送が終わったあとも収入が続く仕組みとして、映画会社がゲームを組み込み始めた。82.1%増という数字は、その循環が回り始めた最初の手応えだと見る。
利益の面では、いまのゲーム収入は償却の負担を吸収している最中で、数字としての果実はまだ先にある。収入が82.1%伸びた事実と、利益がこれからという事実は矛盾しない。前者は種がまかれた証拠で、後者は収穫の時期がまだだというだけだ。
出典: 東宝が公開した決算説明資料(IRページ)。数値・スライド画像は同資料に基づく。
本記事は東宝が公開した決算説明資料を基に、公開情報を要約・整理したものです。特定の金融商品の売買を推奨するものではなく、投資助言ではありません。文責:山口修平(Quest Board編集責任者)。










