売上140億円のうち、81億円がアニメ制作
IGポートは、「攻殻機動隊」「PSYCHO-PASS」のProduction I.G、「進撃の巨人」「SPY×FAMILY」のWIT STUDIO、出版のマッグガーデンを束ねる持株会社だ。2026年5月期の売上高は140億6,400万円、営業利益は7億6,600万円だった。
売上の柱は映像制作事業だ。売上は81億500万円で、全体の半分を超える。「デモンズ・クレスト」「THE ONE PIECE」など複数作品の制作が進み、前年の73億1,800万円から増えた。
ところが、この事業の営業利益は13億4,100万円の赤字だ。前年も11億100万円の赤字だった。会社の看板であるアニメ制作は、それ自体ではお金を生んでいない。
版権事業は売上22億円で利益14億円
では誰が稼いでいるのか。版権事業だ。売上は22億3,500万円と映像制作よりずっと小さいが、営業利益は14億2,600万円。売上の半分を超える額が利益として残る。
中身は、出資した作品が生む配信収入や商品化収入の分け前だ。資料には「ハイキュー!!」劇場版の国内配信収入や海外販売収入、「怪獣8号」の配信収入や商品化収入が大きく貢献したとある。「SPY×FAMILY」「進撃の巨人」「魔法使いの嫁」「攻殻機動隊」といった過去シリーズも好調だった。
前年はさらに極端だった。版権事業の売上は39億5,600万円、営業利益は19億3,400万円。自社100%出資作品のライセンス売上を一括計上したことと、「ハイキュー!!」劇場版の報告が重なったためで、今期はその反動で減っている。それでも会社全体の営業利益7億6,600万円を、版権事業ひとつで大きく上回る。
出版事業は2億5,600万円、商品販売事業は6億2,100万円の黒字。この三つの黒字で映像制作の赤字を埋め、会社としての黒字を保っている構図だ。
赤字の中身と、会社自身の見通し
今期の赤字が膨らんだ理由は資料に明記されている。2025年6月に吸収合併した旧シグナル・エムディの進行中案件を精査したところ、スケジュール遅延と人件費高騰で予算超過になることが判明した。受注損失引当金約5億2千万円、実現済みの損失約1億7千万円、進行基準で計上済みだった利益の取消約8千万円、合わせて約7億7千万円の利益押し下げだ。
ただし、この約7億7千万円を差し引いても、13億4,100万円の赤字は消えない。前年も11億100万円の赤字だったことを考えると、一時要因を除いた地力の部分でも赤字が続いていると見るのが自然だ。
来期2027年5月期は、粗利率の高い作品の稼働で映像制作事業の営業利益は2,700万円の黒字に転じる予想だ。しかし中期経営計画では、2029年5月期に再び2億600万円の赤字に戻ると置いている。人件費や外注費の高騰に歯止めがかからず、「2029/5以降は継続した黒字化は難しい見込み」と会社自身が書いている。
編集部の見立て:アニメを作るのは、権利を持つための入口
ここからは編集部の見方だ。
IGポートは「アニメを作って稼ぐ会社」ではなく、「作った作品の権利で稼ぐ会社」だ。制作そのものは赤字が続き、会社もそれが続くと見ている。それでも制作をやめないのは、作ることが出資の入口であり、出資した作品だけが何年も先まで版権収入を運んでくるからだ。「攻殻機動隊」も「進撃の巨人」も、放送が終わって久しい作品がいまも版権事業を支えている。
中期経営計画でも、2029年5月期の版権事業は売上30億7,900万円まで伸びる計画で、パイプラインには「超大型SF作品」への大型出資が並ぶ。制作の赤字を版権で埋める構図は、今後もっとはっきりする。アニメスタジオの決算は、作画の話ではなく権利の話だった。
出典: IGポートが公開した決算説明資料(IRページ)。数値・スライド画像は同資料に基づく。
本記事はIGポートが公開した決算説明資料を基に、公開情報を要約・整理したものです。特定の金融商品の売買を推奨するものではなく、投資助言ではありません。文責:山口修平(Quest Board編集責任者)。











