「悪い選択」のほうが没入できる?ゲームの道徳的選択を調べた研究

ゲームの中で非道徳的な行動を選ぶと、かえって物語に深く入り込める――そんな可能性を示す研究が、学術誌『Acta Psychologica』に掲載された。オンライン公開日は2026年9月22日。ゲーム内の道徳的な決断が、罪悪感などの感情を介して物語への没入感にどう影響するかを調べた内容で、はてなブックマークなどでも注目を集めている。
論文のタイトルは「Why are immoral choices more immersive? The effect of moral decision-making on narrative immersion via moral emotions and the moderating role of autonomy — Evidence from Chinese gamers」。著者は、陝西師範大学のYilin Li氏と、香港浸会大学のYuen Kuang Jun氏だ。全文はScienceDirectの論文ページで確認できる。
実験の舞台は、アンドロイドの決断を描く物語

実験では、『Detroit: Become Human』と『BioShock』の映像が使われた。本稿の画像は、そのうち『デトロイト ビカム ヒューマン』のSteamストアページに掲載されている素材だ。本作は、人間そっくりのアンドロイドが暮らす近未来のデトロイトを舞台に、プレイヤーの選択で物語が枝分かれしていく作品として知られる。

炎に包まれた街を高所から見下ろす場面のように、重い決断を迫られる局面が多いことが、道徳的選択を調べる題材に選ばれた背景にあると考えられる。なお、なぜこの作品が選ばれたのかについて、論文側の説明は現時点で確認できていない。
320人のゲーマーを2群に分けて検証

対象は、中国の18〜39歳のゲーマー320名(男性174名、女性146名)。参加者は2つのグループに分けられた。
- 自由選択群:映像内で提示される選択肢を、自分で選ぶ
- ランダム選択群:システムがランダムに選んだ結末を視聴する
視聴後、参加者は罪悪感・羞恥心・誇りといった感情と、物語への没入感を5段階で回答した。
数字が示した「自分で選ぶ」ことの重み

結果は次のとおり。
| 群 | 道徳的な選択・行動 | 非道徳的な選択・行動 |
|---|---|---|
| 自由選択群 | 3.43点 | 3.83点 |
| ランダム選択群 | 3.14点 | 2.39点 |
自分で選んだ場合は、非道徳的な選択のほうが没入感の得点が高かった。一方、システムに選ばれた場合は、道徳的な行動のほうが高く、結果が逆転している。論文のタイトルにある「自律性(autonomy)」が、この差に関わる要素として扱われている。
同じ非道徳的な展開でも、自分の意思で選んだのか、ただ見せられたのかで受け止め方が大きく変わる、という構図だ。

この結果をどう読むか
今回の研究は、中国のゲーマー320名を対象にした、映像視聴による実験である。実際にゲームを最初から最後まで遊んだ場合に同じ結果が出るかは、本稿の時点では確認できていない。日本のプレイヤーに当てはまるかも、この結果だけでは分からない。
とはいえ、「選択の結果に責任を感じるからこそ、物語が自分ごとになる」という考え方は、分岐型のストーリーゲームを遊ぶ人にとって思い当たる節があるはずだ。詳細な分析方法や統計の扱いを知りたい人は、論文ページで確認してほしい。










