ハエの神経回路が『DOOM』の操作につながる
ショウジョウバエの神経回路データを使い、『DOOM』をプレイさせる実験プロジェクト「DOOMFLY」が公開された。手がけるのはAlex Wormuth氏。ゲームの映像を視覚入力に変換し、ハエの神経回路を表したデータを通して、ゲーム内の操作へつなぐ試みだ。
利用するのは、オスのショウジョウバエの中枢神経系を対象とした「MaleCNS v1.0」。神経細胞同士のつながりを記録した「コネクトーム」と呼ばれるデータで、いわば神経回路の配線図にあたる。生きたハエにコントローラーを持たせるという話ではなく、その配線データをソフトウェア上の処理に利用している。
プロジェクトの概要はDOOMFLY公式サイトで紹介されており、開発者はXの発表ポストでも公開を知らせている。
ゲーム画面を視覚入力へ、回路の反応を移動や射撃へ
処理の流れは、リアルタイムのゲーム画面から網膜への入力を推定し、それをMaleCNS v1.0の神経回路データに渡して、ゲーム制御へ変換するというもの。『DOOM』の画面と操作の間に、ハエの視覚と神経回路をもとにした処理を挟む構成だ。
操作への割り当ても、この実験のポイントとなる。視覚反応を校正したうえで、「DNp20」「DNpe017」などのニューロンを選び、旋回・前進・射撃の制御に結びつけている。神経回路のデータを読み込むだけで操作が決まるわけではなく、回路への入力と、ゲームに返す出力をつなぐ設計がある。
そのため、「ハエが『DOOM』のルールを理解した」とまで受け取るのは早い。公開情報から読み取れるのは、神経回路データをゲーム操作に利用する仕組みだ。敵や目的をどこまで認識できるのか、安定して攻略できるのかは、この仕組みの説明とは分けて捉える必要がある。
2,558万本超の接続データを使う実験、コードも公開
MaleCNS v1.0には、25,582,938本の接続と124,177,617のシナプス接触が記録されている。シナプスは神経細胞同士が信号を伝える接点で、接続の本数とは別に数えられている数字だ。
一方、DOOMFLYの説明には、対応づけが済んでいない光受容体が42個残っているとの記載もある。光受容体は光を受け取る細胞。大規模な配線データを使うことと、視覚入力の対応づけがすべて完了していることは同じではない。
実装を詳しく知りたい人に向けて、コードはGitHubの「nftechie/doomfly」で公開されている。ゲーム画面から何を入力し、どのニューロンの反応を操作として取り出すのか。DOOMFLYは、生物の神経回路をゲームの操作系へ結びつける、その接続部分に注目したい実験だ。









