2015年9月15日、Windows・macOS向けに1本のRPGが発売された。開発したのはアメリカのインディー開発者トビー・フォックス。グラフィックの一部を除き、シナリオも音楽も戦闘システムも、ほとんど全編を彼が1人で作った作品だった。
プレイヤーが操作するのは、地下に落ちた人間の子供だ。地上と魔法の壁で隔てられた「地下世界」にはモンスターが暮らしていて、子供は地上へ帰る道中で彼らと出会う。戦闘に入ると、敵のターンでは弾幕シューティングのような攻撃が飛んでくるのを避ける。そして自分のターンでは、攻撃して倒すか、モンスターと交渉して「見逃す」かを選べる。この選択が会話・キャラクター・物語そのものを変えていく。

何が新しかったのか
フォックスは自身がJRPGのファンでありながら、古いRPGのデザインに退屈していた。だから本作には、レベル上げやゴールド稼ぎといった単調な作業も、来た道を戻らされる「おつかいクエスト」も入れなかった。戦闘システムの手本にしたのは『スーパーマリオRPG』『マリオ&ルイージRPG』の面白さで、敵の攻撃は『東方Project』などの弾幕系シューティングから取り入れている。
交渉して戦いを避けるという発想の出どころは『真・女神転生』だ。フォックスはこれを掘り下げ、交渉に失敗したら一度戦わないと先へ進めないようにした。「僕はぜひ一度モンスターと会話をしてみたかったんだ」という彼の言葉どおり、開発を進めるうちに一体も倒さずクリアできるというコンセプトが「ごく自然にできあがっていった」。それでも戦う選択肢は残された。それこそが作品のテーマに関わるからだ。
制作費はKickstarterで集めた。2013年6月25日から1か月、目標5,000ドルに対して2,398人から51,124ドル――目標の10倍以上が集まっている。フォックス自身はゲーム開発の経験がほとんどなく、子供のころ兄弟と『RPGツクール2000』で遊び、高校時代に『MOTHER2』のROMハックを作ったのがキャリアのすべてだった。開発には2.7年がかかった。

当時、どう受け止められたか
Metacriticには42本のレビューが載り、平均92点。2015年のWindowsゲームでは3位にあたる。GameSpotのテイラー・ヒックスは「近年もっとも先進的かつ斬新なRPGの1つ」と評し、The Escapistのベン・クロショーは2015年で最もシナリオがよかったゲームに本作を挙げた。ボストン・グローブのジェシー・シンガルは、攻撃以外の行動を選んでいるうちにモンスターに感情移入してしまう点に、**この作品の「深い部分にある、根本的なやさしさ」**を見ている。
一方でグラフィックの評価は割れた。クロショーは「ひとことで言ってしまえば、ダメ」と切り捨て、IGNのカリー・プレイギも「見苦しいところもある」としつつ音楽とアニメーションが補っていると書いた。フォックス自身は、大人数のアーティストチームがいても方向性は変えなかっただろうと語る。「プレイヤーが愛着を抱くのは、細かく描き込まれたキャラクターじゃない。シンプルに描かれたキャラクターのほうなんだ」。
売上も伴った。Steam Spyの速報によれば2015年の売上は530,343本で、同年のSteamベストセラーに入っている。2016年2月はじめには100万本に到達した。
何を残したか
本作はすぐにカルト的な人気を獲得した。発売から1年ほど経ったころ、フォックスは人気の大きさに驚いたと語りつつ、それがストレスでもあると明かしている。「二度とこれほど成功するゲームを作れなくても驚かない。でも、それでいい」。NPRのアナ・ディアスは、本作が**「一世代まるごとのエンタメの趣味を形作った」**と書き、ミームを通じて新しい命を得たと評した。
日本でも反響は大きく、Automatonのレビューはトビー・フォックスを「ビデオゲーム演出の天才」と評した。米津玄師はプレイして感銘を受け、勝手にイメージソング『ごめんね』を作曲している。2021年にテレビ朝日系で放送された「国民5万人がガチ投票!テレビゲーム総選挙」では13位。インディーゲームとしては最高順位だった。
ファンによる二次創作も広がり、なかでもスピンオフのファンゲーム『Undertale Yellow』は7年の開発を経て2023年に公開され、各SNSで大きな人気を集めた。一方でファンダムは、「正しい遊び方」をめぐる対立から、敵を倒した配信者への嫌がらせが起きるなどの問題も抱えた。
いま遊べるのか
当時の対応機種は、Windows・macOSでの発売のあと2016年にLinuxへ移植。家庭用ではPlayStation 4、PlayStation Vita、Xbox Series X|Sに展開している。
現在はSteamで**¥245**(Windows・Mac・Linux対応)。レビュー341,221件で**好評97%**という高い評価が続いている。
ストアページ: https://store.steampowered.com/app/391540/
当時のトレーラーはSteamストアで視聴できる
当時の評価・開発の経緯は、Wikipedia(日本語版・英語版/CC BY-SA)を参照した。画面写真はSteamストアの公開素材。











