2013年9月4日、Steamで一本のホラーゲームの配信が始まった。カナダの独立系スタジオRed Barrelsの処女作『Outlast』である。主人公が武器を一切持てないという一点で、当時のホラーゲームの常識をひっくり返した作品だ。

記者が精神病院に忍び込む、それだけのゲーム
プレイヤーが操作するのはマイルズ・アップシャーというフリーランスの調査記者。コロラド州レイク郡の山奥にある精神科病院「マウント・マッシブ・アサイラム」に、内部告発のタレコミを受けて潜入する——それが物語の出発点だ。一人称視点で、手にしているのは取材用のビデオカメラだけ。暗闇ではカメラのナイトビジョンだけが唯一の視界になり、そのバッテリーは容赦なく減っていく。
GameSpotのレビューは、この設計を的確に言い当てている。「Outlastは腕前を競うゲームではない。そしてそれは理にかなっている。あなたは警官でも兵士でも遺伝子改造されたスーパーヒーローでもない。ただの記者だ。記者であるあなたには、廃墟と化したマウント・マッシブ・アサイラムの廊下に潜む巨漢や、ナイフを持った追跡者や、その他の殺人狂どもを追い払う技術など無い。撃つことも殴ることも、壁から配管を引き抜いて叩きのめすこともできない。できるのは走ることと隠れることだけだ」

元AAA開発者10人が、14か月で作った
Red Barrelsにとって『Outlast』は最初のゲームだった。ただしチームは素人ではない。メンバーはUbisoft出身で、『Prince of Persia』『Assassin’s Creed』『Splinter Cell』といった大型タイトルを手がけてきた面々である。その10人が、14か月でこの一本を作り上げた。
道のりは平坦ではなかった。CEOのフィリップ・モランが2018年に語ったところによれば、彼らは18か月にわたって出資者を見つけられなかった。最終的にカナダ・メディア基金から100万カナダドルの投資を取り付け、開発にこぎつけている。
評価は数字にも表れた。MetacriticのスコアはWindows版が59レビューで80点、Xbox One版が6レビューで80点、PS4版が33レビューで78点。E3 2013では複数の賞を受け、その中には「Most Likely to Make you Faint(最も失神させそうな賞)」という物騒な名誉も含まれていた。Rock, Paper, Shotgunは「Outlastはゲームがいかに怖くなれるかの実験ではない。その実証だ」と評した。IGNのマーティ・スリヴァは7.8点をつけ、ホラー要素とゲームプレイを称賛する一方で、環境デザインとキャラクターモデリングには苦言を呈している。
一作が、シリーズと映画になるまで
PS4版は2014年2月4日、PlayStation Plus加入者向けの月替わり無料タイトルとして配信された。2024年10月時点でのプレイヤー数は3,700万人に達している。
成功を受けて、Red Barrelsは2014年10月23日に続編の開発を明かす。『Outlast 2』は延期を重ねた末に2017年4月25日発売。2018年2月27日には『Outlast: Bundle of Terror』としてNintendo Switch版がサプライズ投入された。さらに冷戦期を舞台にした前日譚『The Outlast Trials』が2024年3月5日に正式リリース。ゲーム外にも広がり、1作目と2作目の間を描くコミック『The Murkoff Account』が2016年から2017年にかけて、続く『The Murkoff Collections』が2024年10月に刊行された。2024年10月30日には、Lionsgate Filmsによる映画化が進行中であることが発表されている。脚本は原作ゲームを書いたJ・T・ペティが担当する。
いま遊べるのか
当時の対応機種はWindows(2013年9月4日)、PlayStation 4(2014年2月4日)、Xbox One(2014年6月19日)。2015年3月31日にLinuxとOS X版、2018年2月27日にNintendo Switch版が続いた。
現在はSteamで**¥425**。Windows・Mac・Linuxに対応している。**レビュー138,502件で好評96%**という、13年を経てなお揺るがない評価が並んでいる。
ストア: https://store.steampowered.com/app/238320/
当時のトレーラーはSteamストアで視聴できる
当時の評価・開発の経緯は、Wikipedia(日本語版・英語版/CC BY-SA)を参照した。画面写真はSteamストアの公開素材。











